平地ランナーがトレランに参戦する前に知っておくべき幾つかのこと
ロード(舗装路)ランナー及びローディーの皆さん、トレラン興味ありませんか?
自分はロードラン→トレイルラン→(故障)→ロードバイクと主戦場?を変えてきました。
(トレランをメインに…と思った直後に脚を故障して、走るのはお預けとなってしまいました。今年ようやくランニングの世界に復帰し、超小さな大会(ロード)ですが入賞できるまで回復しました。いよいよトレランにも復帰予定!)
図らずも色々とやってきた人間として、トレランに参戦する予定の方に幾つか知っておいて頂きたいことがあります。
これを知っていれば、もしかすると自分も故障せずに済んだかもしれません。万全の準備をしてレースに向かいましょう!
トレランとは?
一時期の競技者や大会が急増するフェーズは終わったような気がしてますが、逆に言うとある程度日本にも定着したとも言えると思います。
トレランの特徴①高低差がハンパないっ!
トレランはご存知のとおり多くの場合山がコースです。
当然山越えする場面も出てくるので高低差(獲得標高)がハンパないです。
具体的に見ていきましょうか。
https://www.jaaf.or.jp/news/article/11752/
五輪選考のMGC。終盤に上り坂があり、そこで色々なドラマが生まれたことは記憶に新しいところです。最後の方キツイ坂が続いた印象がありますよね。
コース概要としては、始めに35mくらいガッと下って、中盤はほぼ平坦、そして最後の4キロでその35mを上ってゴールという感じです。
さて、トレラン。
http://www.hasetsune.com/30K/course.html
「日本山岳耐久レース(ハセツネCUP)」の30k(距離32km)コースの図です。
ザックリいうと500m上って、400m下って、再度300m上って、仕上げに400m下ってゴールです。ちなみに実際には、もっと細かく上り下りを繰り返すことになるので負担は増えます。
更にいうならば、このハセツネ30kはハセツネCUPという言わば本戦の前の登竜門的なレースであり、トレラン業界では、そこまで過酷なレースとは見なされていません(レベルは凄く高いので上位入賞するのは困難だが、距離や標高差は中くらいなのでマイペースで走る分には完成できる可能性が高いという意味)
最難関クラスになると、距離も高低差もツールドフランスの山岳コースとあまり変わらないです。距離160km高低差5000mとか…(それを自転車ではなく、走ります。勿論速度(競技時間)は違いますけど)
どうですか?いわゆるロードランの「結構上りが多い」というレベルではないことがお分かりいただけると思います。(念のためですが、別にトレランの方が凄いとか偉いとかそういう話ではありません。競技特性(勝負のポイント)が違うだけです。)
しかし、トレランでは確実にロードランより「脚がやられます」。これは事実。
もう滅多滅多に痛めつけられます。
ちなみに意外かもしれませんが、多くのトレラン選手は「上り」より「下り」を厄介だと感じます。
「上り」は心肺能力が試されますが、キツイなら、歩幅を小さくして歩けば良いのです。勿論ダメージゼロにはなりませんが、かなりの疲労まで耐えられます。心肺能力と乳酸の勝負です。ロードバイクが強い人は得意だと思います。
しかし「下り」は、ダイレクトに「脚の耐久力」が試されます。
人間の脚の構造は基本的に進む(体を進ませる)設計になっています。しかし「下り」は「(矛盾しているように聞こえるでしょうが)体を止めながら進む必要があります。」
重力に任せて超スピードで降りた場合、その一歩一歩が大きな衝撃となって一気に脚を削り取っていきます。仮に歩いてゆっくり降りたとしても「スピードが出ないように体を支える負荷」が掛かってくるので、ジワリジワリと確実に疲労が蓄積してきます。
どちらにせよ、脚の疲労が一度限界を越えると、下りをゆっくり降りられない(自分の体重を留める脚が残っていない)ので、一気に駆け下る羽目になります。そして、さらに脚を痛めつけることになります😱
「上り」は心肺機能や筋肉の乳酸疲労に繋がりますが、これは休めば比較的短期で回復します。しかし、「下り(のダメージ)」は人体の固い部分、関節や”筋(スジ)”にダメージを与えます。そして、場合によっては回復までに長期間を要します。
自分が故障で2年間走れなくなったのも、この下りで脚が限界を超えたのに、そのままレースを続行したことが原因です。トレランは自分の限界を見極めて、リタイヤするならば自力で帰る余力を残すべきなのです。
そうならないためにも、トレランは「脚作り」がロードラン以上に重要になってきます。
トレランの特徴②コースが自然環境ゆえの備え
ロードは基本的にアスファルトですが、トレランは決まってません🙄
土、砂利、岩、落ち葉等々レースの中でも随時変わっていきます。ロードのように脚幅やケイデンスを一定に保つというのはそもそも無理で、状況に応じた走り方が求められます。
なお、トレランもロードとは違う観点で「厚底」シューズが一定の地位を占めています。やればわかりますが、石や岩の「突き上げ(足裏を圧迫する)」は意外とストレス・疲労の原因となりので、ある程度ソールは厚さ・固さ・グリップ力があった方が楽だと思います。
自分はadidasの軽登山靴というのでしょうか?ミッドカットの底固めの靴を何代も履き続けてます。
トレランシューズのメーカーは、ロードのメーカーとは違うメーカーがシェアを取っていることも多く、Northfaceとか、Hokaoneoneとか、Salomonとか、登山やアウトドアの会社を始め色々な会社があります。
そして、前提としてトレランは山岳地帯で行うため「自己責任(自力で生きて戻ってくる)」です。エイド(補給所)の間隔が離れていたり、飲食物が十分備わっていない可能性もあります。
ゆえに、その他の装備もコース・気候・自分のプランに合わせて持参する必要があるのです。以下ロードランではあまり使わないけど、トレランで必要となる可能性がある装備の一例です。
バッグ
装備を持参するために必要です。勿論ショート(20km位まで)ならば、持っていかない選手も多いですが、迷ったら持っていくという方針で良いと思います。
ボトル(飲食物)
バッグに付属することもあります。勿論、水筒やペットボトルでも構わないのですが、軽量性や飲みやすさを考慮した専用ボトルやハイドレーションを用意する人も多いです。これも、足りなくなるよりは余った方が良いですので、迷ったらとりあえず持っていきましょう。
もし新たに買うならソフトフラスクとか言いますが、柔らかい素材のものをおススメします。素材によってはそのまま凍らせたりできますし、吸う気力が無くなっても、手で潰せば出てきますので。場合によっては冗談じゃなくそんな事態になることもあるのです…
また、長丁場になってきますので水分だけじゃなく栄養補給も必要です、エナジーバーやジェル等好みや作戦により持っていくことになります。
ちなみにミドル以上のレースでは、人間は疲労困憊すると(内臓をやられるので)食べるのもつらくなるという事実に気づかされることになるでしょう・・・
ポール
キツイ上りの時にポールを使う事で脚だけではなく、「上半身(腕・背中)」を使って上ることができるので付加を分散できます。好みですので、ポール使わない派の選手もいますが、個人的にはミドル(30km)以上のトレランなら必須と思っています。
手放してしまいましたが、昔↓のシナノのポールを使ってましたが中々良かったですよ。
ロードバイクみたいな話になりますが、素材が主に「カーボン」か「アルミ」になります。カーボンの細身の物は本当に軽量で良いのですが、全体重を預けるような使い方はできません。
紹介したシナノのポールはアルミの細身で、まあまあ軽くて、まあまあ乱暴に扱えます😅
数百gの差なんて気にしないけど、安心感(丈夫さ)を求めるならばアルミの太めのもの(少し持ち運びに邪魔ですが何ならスキー用のやつでも良い)をおススメします。
なお、自然保護の観点から、ポールの使用制限や先端形状の指定がある場合もありますのでご注意を。
防寒着・手袋
山は恐ろしく天候や気候が変わります。平地では必要ない防寒着(悪天候用装備)も要検討です。また、長いレースになると着替えを用意して、事務局に預けて途中のエイドで受け取り着替えるなど、如何に快適にレースをするかという戦略(プラン)が重要になってきます。
ちなみに登山をやる人はご存知でしょうが、着る物は幾つかレイヤー(層)で考えると良い(快適・調整が容易)とされています。
例えば、第一レイヤー(肌に接するもの)は吸水性の高いもの、その次(第二レイヤー)は水分をある程度保持できる(水を肌に戻さないもの)、外側(第三レイヤー)は防水透湿素材のもの、などです。
アウトドアメーカーのものは性能・デザイン性も高いのですが、お値段も高い傾向にあります。
穴場?はワークマンとかプロのような働く男の店です。デザインや軽量性はそこそこですが、かなりの低価格で防水透湿素材の商品があったりします。
ヘッドライト
ロードではまず着けないですよね。
トレランのミドル・ロングコースになると、10時間以上(時には48時間(仮眠・休憩含め))のレース時間となります。こうなるとスタートが早朝4時とか、夜間も進まなければ辿り着かないとか、そういう次元の展開になってきます。
足元が悪いトレイルで手持ちの懐中電灯は危険です。ゆえにヘッドマウント型のライトが必要となる場合があります。
お値段ピンキリですが、ある程度の防水性は必須です。自分はコスパが良いGENTOSを愛用してますが、色々な便利機能を備えたハイエンドモデルもあるので、予算に合わせて選んでください。
コンパス・GPS
いわゆるビーコンというのでしょうか?本格山岳用GPSを用意すべきレースは限られるのでしょうが、レースによっては携帯電話が必須(救助要請用)だったりします(GPS機能があるので自分の居場所も分かるでしょう。)
あと、距離や高度を記録してくれるGPSウォッチもあると便利です。山ゆえ、目印や距離表示が満足にあることの方が少なく、ペース配分等に使えます。
今はGPSウォッチも安いのが出てますが、「バッテリーの持ち」には要注意です。節約モードでも想定タイムに届かなければ使い物になりません。
メーカーが提示する稼働時間はしばしば「最高の状態」でのデータだったりします。バッテリーは使ううちに劣化することもありますので、レビューなども参考に余裕のあるモデルを選びましょう。
まとめ「それでもトレランをやる理由」
とりあえずキツイ上に装備も必要ということがお分かりいただけたでしょう。
何かトレランやらない人の主張みたいですが、自分は引き続き挑戦するつもりです。
理由は二つ。
楽しい!!
楽しいんです。
走っている時アスレチックで遊んでいるような気分になることがあります。この岩場はどう足を運ぼうか?次の下りはどういうルートで進もうか?次々と課題が与えられて、解きまくる感覚です。
凄い達成感!!
終盤疲れきった際に、越えるべき高い山を下から見ると「本当にこれ登るのかよ・・・」と怖気つくことはあります😅
ゆっくりでも一歩づつ進むと、必ず越えられます。上に来た時に振り返ると「こんなに登ったんだ!」と自分のことながら感激します😁
世知辛い世の中で、こんな確実かつ即座に努力の成果が確認できることなんてないですよ😍。景色も絶景だったりしますし。
「健康のため」というレベルで参戦する競技ではないかもしれません、でも、やる気と機会があれば是非是非チャレンジしてください!
最後になりますが、本来トレランも登山(山歩き)も同じ自然を愛する仲間のはずです。しかし、一部のマナー違反の人のせいで色々とトラブルが起きているのも事実です。
どちらが偉いとか優先されるべきってのないはず。お互い安全第一で譲り合いの精神を持ちましょう。自然と自然を愛する人へのリスペクト。これがトレラン参戦の条件です。