ホイールの軽さは「絶対的な正義」ではない!!高級軽量ホイールを買う前に知っておくべきこと。

ロードバイクは交換できるパーツが沢山あります。というかパーツの塊がロードバイクと言った方が良いかもしれません。

その中でも、多くの人が一番初めに交換(アップグレード)を検討するのが「ホイール」です数あるパーツの中でも「効果が実感」しやすい物の筆頭ですね。

ホイール選びについては、ここ数年色々と自分なりに試行錯誤してきました。

自身の考えの整理といいますか、もしこれから二本目、三本目のホイールをご検討の方がいれば、参考にしてもらえるよう「ホイールの重量」について見解をまとめてみます。

なお、少し長く、ヤヤコシイ話もでてきますので、「初めてのホイールは何を買えば良いの?」って人には読むのをおススメしません。(はじめての交換ホイールは「とりあえずZONDA」がおススメです。)

→追記 安くて、ZONDAより170g軽いホイールを発見。買ってしまいました😍

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ホイール沼は深く、そして広いのです…
[caption id="attachment_705" align="alignnone" width="607"] この業界ではとりあえずゾンダ!という言葉があります。生ビールみたい…[/caption]

ホイールの軽さは正義です!!

あれ?言ってることが違うぞと思った人、”絶対的”がつくかどうかがポイントです。

ホイールに限らず、自転車にとって軽さというのは正義です。同じ力量の選手が軽量カーボンとレトロクロモリに乗ったら(特に上りが多いコース設定ならば)勝負になりません。(この比較検証はGCNがやっていて過去に紹介したのでこちらを参照のこと。素材の差は必ずしも重量の差だけではないですが、仮にカーボンと同じ重量のクロモリがあれば、タイムの差はかなり縮まるはずです。)

ホイールの性能は、沢山の要素によって決まるので、一概には言えません。重量(もっと言うと、その重さはリムなのかハブなのかスポークなのか?)、剛性、リム幅、リム高、ハブの回転、スポークの素材・本数・組み方等々、専門家や上級者同士が話しても評価が分かれるのは珍しくありません。

今回ホイールの重量(主に外周部にあたるリムを想定してます)についてのみ考察しますが、思いっきり単純化すると「軽いホイールは加速しやすいが減速もしやすい。」「重いホイールは加速は鈍いが減速し辛い。」というのが実感であり、理論上もこれしかないと考えます。

マリオカートで言うと、軽いホイールはピノキオ、重いホイールはクッパです。漕ぎ出し(加速性)ではピノキオですが、スピードに乗った後の巡航性はクッパですよね。

だし、重いホイールを回し続けるのは脚を使います。上記「減速し辛い」というのは「楽に回せる」という意味ではありません。高速移動する重いものは運動エネルギーを蓄えているわけで急には止まらない(止まれない)わけで、そこに強い出力を重ねていくことで、より高速に巡航できるようになるという意味です。

たまに「軽いホイールは漕ぎ出し(加速)が軽くて最高!!え、重いホイールの方が止まりづらいだと?車重+体重で70kg位ある中でホイールの数百gの慣性なんて、無きに等しい!!」と主張する人がいますが、これはフェア(理論的)な考え方とは言い難いです。

漕ぎ出しの軽さを感じるなら、それは「たかが数百g」の差の影響です。漕ぎ出しの軽さと慣性力(止まりやすさ)はセットというか同じことを言っていますから、漕ぎ出しの軽さを認めて、慣性力は認めないというのは理屈に合いません

勿論、ホイールは無数の要素が絡み合って「乗り味」を出しますので、バランスの良いホイールは漕ぎ出しが軽いのに、止まらないという感覚になるのは分かりますが。

あと、重いホイールが良い(巡航性が高い)というならば(もの凄く重い)鉛のホイールでも使ったら良いじゃないか?という意地悪を言う人がいますが、それは極論(暴論?)です。

塩分は人にとって必要なものですが、大量に摂取したら死にます。ホイールの議論も「競技に使える範囲での重量」であることは大前提です。「重たい」って言っても、せいぜい前後セットで2000g程度の想定です。

[caption id="attachment_706" align="alignnone" width="397"] シロッコ。激重ホイールではありますが、いろんな理由から私の常用ホイールです。前後で1900g弱です。[/caption]

結局軽い方と重い方どちらが良いのか??

もし、一つ選ぶならばやはり「軽い方」でしょう。理由は二つあります。

一つ目は「楽だから」。ロードバイクにおいて軽さは正義です。ここ20年の機材の進化は、8割がた「軽量化」と同義です。

二つ目は「勝負所における使い勝手が良いから」。多くの自転車レースにおいて、勝負所(選手の差がつく所)は上り坂とスプリントです。逆に言うと、平坦な場所で巡航している限りにおいては、ドラフティングしあっていればそんなに差がつきません。

上り坂は「常に漕ぎ出し」みたいなものです。足を止めたら直ぐ止まる(というかバックしちゃう)んですから。スプリントも一瞬の反応性と加速性の勝負です。

これら場面においては圧倒的に「軽いホイール」の方が優位です。やはり「軽さは正義」なのです。

じゃあ、高級軽量ホイールを買うしかないのか…

この記事のタイトルを思い出してください。「軽さは絶対的正義ではない」のです。

どういうことか?

分かりやすい話が第一級のロードレースにおいて、プロが使っているのは、基本軽量ホイールです。2019のツールを制したチームイネオスは、山岳コースなどでライトウエイト(Lightweigh)社製マイレンシュタイン・オーバーマイヤー(Meilenstein Obermayer)というホイールを使っていたようです。

このホイール60万円位するらしいです…自分は一生使うことないでしょうね。

詳しい型番等分からないのですが、重量前後で1000g以下!!らしいです(前後で、ですよ。)凡百のホイールだと、この位軽いと剛性が不足しがちですが、一流中の一流なイネオスメンバーが選ぶ位ですから、当然その辺も最高なんでしょうね。

しかし、軽いホイールが”絶対的”正義ならば、この軽量ホイールをずっと使えば良いのですが、チームイネオス始め、他のチーム含めてそうはなってません

一番分かりやすいのが「タイムトライアル」です。

TTのホイールは「重い」

そう、TT(タイムトライアル)では各チーム。フロントはディープリムorバトンホイール、リアはディスクホイールを使うのが普通です。そして、ディスクホイールは通常1000g程度の重さです(リアだけで、ですよ。前後だと1800g~2000g位になるでしょう。)

この選択は空力性能を重視した結果でしょうから、重たいホイールが良い!という単純な話ではありませんが、プロが重たいホイールを選択しているのは紛れも無い事実です。

軽いホイールの得意分野を覚えていますか?上り坂とスプリントです、要は「加速性」が活きる場面です。

TTコースは、基本的に平坦、そして一度スピードに乗ったら、後はそれを独力で維持できるかどうかの勝負です。この場面において、軽量性は大きな武器にはならないのです

ちなみにドラフティングが禁止のトライアスロン競技も、TTと競技の質が似ているので、自ずから機材の選択傾向も似ています。

[caption id="attachment_708" align="alignnone" width="508"] (ツールじゃないけど)後輪がディスクホイール。或る意味”究極のディープリム”空力性能に優れるが重い。[/caption]

(二回目)結局軽い方と重い方どちらが良いのか??

一つだけ選ぶならば、そして予算も潤沢ならば、高級軽量ホイールの選択肢は有力です。私も家の敷地から石油が噴出したら60万円のホイールを一本買っときます😆

ただし、(自分がそうですが)予算も限られる中では自分がどういうレースに参加する(どういう乗り方をする)のかを今一度振り返る必要はあると思います

平坦な道を、仲間と一緒に楽しくサイクリングするなら、(仲間に自慢できるとかは置いといて)軽量ホイールは不要でしょう(60万円のホイール買って、何となく楽かな?位ではコスパ悪すぎでしょう…)。

ホイールの軽重を語る上でローディーの中でよく言われるのが「軽量ホイールで高速巡航するなら、よりペダリングの上手さが必要」ということです。重いホイールは脚を使うけど、或る程度力任せでも回り続けます。軽量だと「ホイールに力を貯めておけない」ので、きちんと巡航するには、より精緻なペダリング技術が必要です。

そして、距離が短く、独力で進むTT的な競技に興味があるなら、そもそも軽量さは最優先事項とはなりません

一方で、ヒルクライムや山岳コースを中心に戦う人、中上級者同士でアタックへの対応が求められる人は、やはり軽量性というのは大きなアドバンテージとなります。

考えてみると多分当たり前の話なんですが、「ホイールは高いほど軽量、軽量ほど高い」「プロも(山岳コース等では)軽量ホイールを使用」な事実から、私がロードバイクに乗り始めた頃は「軽いホイールは絶対的正義」と思い込んでいたので、そうではないという事実を元に、自身のホイール選びをしていただければ幸いです

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60万円のホイール…父ペンギンのお小遣い4年分位だね…